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■資金は「企業の血液」

 

「地域に愛され、親しまれ、信頼される銀行」──これは、私が大学を卒業して就職し、7年半お世話になった、大垣共立銀行の基本理念です。地方銀行の特色は地域密着です。その地域に愛され、親しまれ、信頼される。大垣共立銀行OBとなった今になって振り返ると、この理念の下に、全社員、一つにまとまっていたのだ、とあらためて思います。

 

「全ての中小企業を元気にする」──これは、私の会社、フィナンシャル・インスティチュートの経営理念です。フィナンシャル・インスティチュートは、全ての中小企業を元気にする、というところに会社の存在意義がある。このように、会社の経営理念は、なぜその会社が存在しなければならないか、それを示すものです。

 

 そしてその経営理念を実現するために、将来のビジョンがあります。私の会社であればそれは、「事業再生コンサルタント会社でトップとなり、日本で一番、中小企業の再生に貢献できる会社となる」です。このビジョンにより、会社を経営理念の実現に向かわせることができます。

 

 そしてビジョン実現のために事業目標があります。それは具体的に、将来の売上目標、利益目標などで表されます。そこでその目標を達成するために、営業戦略、商品戦略、人事戦略、組織戦略などとともに、財務戦略が立てられます。

 

 財務とは、企業における、資産・負債・損益・資金繰りなどの管理のことを言いますが、これらはいずれも、事業目標を実現するための土台となるものです。負債と資本による資金確保により、資産が形成され、その資産が土台となり売上、利益が生み出され、その過程の中で資金が回る、つまり資金が「企業の血液」となって回ることになり、これが資金繰りとなります。資金繰りが円滑に回らなければ、その企業は病気になって売上・利益を生み出す力がなくなり、そしてそれが完全に回らなくなれば、それは「企業の死」、つまり倒産、を意味します。

 

 資金繰りを円滑に回すためには、財務戦略をしっかり立て、それを実行するために多くの戦術を行っていくことが重要となります。そして、その財務戦略とともに営業戦略、商品戦略、人事戦略、組織戦略がうまくいくことによって事業目標が達成され、それがビジョンの達成、そして経営理念の実現を可能とします。

 

 この本では、その財務戦略の立て方を述べ、その戦略を実行するためのいろいろな戦術を述べていきます。それにより、お金が「企業の血液」となって回ることになり、売上・利益が生み出され、それが事業目標の達成、ビジョンの達成、経営理念の実現に結びついていきます。

 

 その財務戦略もなしに、細かな戦術ばかりに走って失敗する企業が多くあります。この本を読んでいただくことにより、あなたの会社の財務戦略が作られ、資金繰りが回り、会社が発展していけることを祈っています。

 

 財務戦略の構成

 

■全ての戦術は資金繰りにつながる

 

 財務戦略は、企業の事業目標達成のための財務のシナリオとなります。その構成は次のとおりとなります。

 

 企業の決算書を見ると、貸借対照表と損益計算書とがあります。貸借対照表の右側を見ると、負債の部と資本(純資産)の部とに分かれます。企業が売上・利益を作るには、それを作るベースとなる資産が必要であり、その資産を作るには、負債と資本とで資金を調達しなければなりません。それらをどう調達するかが、調達戦術になります。そして資産は、企業の目標の売上・利益達成のために運用されますが、どう運用するかが運用戦術となります。

 

 そして損益計算書を見ると、売上原価と、販売費及び一般管理費(経費)とに分かれます。売上原価は売上を作るために使われるものであり、それをどう使うかが原価戦術となります。そして売上を作って利益を実現するために経費をどう使うかが経費戦術となります。

 

 なおこの流れの中で、資金の流れが滞らないように円滑に回るようにすることがとても重要であり、その見方からすると資金繰り戦術となります。全ての戦術は、資金繰り戦術と密接につながっています。

 

 財務戦略で大事なこと

 

■利益を上げるのが一番

 

 ある大きな取引で、売上が1,000万円、仕入が700万円、売上総利益が300万円あるとしましょう。そしてこの取引に経費が400万円かかる場合と、200万円かかる場合とを、想定してみます。

 

 損益はそれぞれ、次のとおりとなります。

 

 売掛金の回収は早く、買掛金や経費の支払いは遅く、とはよく言われることです。例えば、@経費400万円の場合において、売掛金の回収が3月31日、買掛金の支払いが4月30日、経費の支払いも4月30日となれば、現金の動きと残高は、次のようになります。

 

 一方で、A経費200万円の場合において、逆に売掛金の回収が遅く、仕入後の買掛金の支払いや経費の支払いが早くなり、売掛金の回収が6月30日、買掛金の支払いが3月31日、経費の支払いも3月31日となれば、現金の動きと残高は、次のようになります。

 

 経費400万円の前者では、確かに3月31日から4月29日までは現金を豊富に保有することができます。しかし結局最後は、現金残高がマイナスとなってしまいます。一方、経費200万円の後者では、3月31日から6月29日は現金残高がマイナスとなりますが、最後の現金残高はプラスになります。

 

う考えると、売掛金の回収は早く、買掛金や経費の支払いは遅く、という資金繰り対策を行っても、利益を上げるという対策にはかなわない、ということが分かります。

 

 財務戦略の中では、利益を上げるためには売上戦術、原価・経費戦術を先に考えます。そしてその戦術を実行するために、調達戦術、運用戦術が必要となります。

 

 私の会社に相談に来る企業の中には、利益をどうやって上げるか、という対策を考えることよりも、どう資金繰りの急場をしのぐか、どううまく金融機関から融資を受けるか、という、その場しのぎの戦術ばかり聞いてくる経営者がいます。

 

 しかしそのような企業は赤字となっています。このように、財務戦略全体から見ると、いくら急場をしのいでも、いくら金融機関から融資を受けても、結局は目先の資金繰りにしか寄与しない、ということが分かります。